R.シュトラウス 交響詩「ツァラトゥストラはかく語りき」

~フリードリヒ・ニーチェからの自由な発想による大管弦楽のための交響詩~作品30

作曲者:R・シュトラウス
作曲年:1896
演奏時間:約33分

  1. 導入部
  2. 現世に背を向ける人々について
  3. 大いなるあこがれについて
  4. 喜びと情熱について
  5. 墓場の歌
  6. 学問について
  7. 病より癒え行く者
  8. 舞踏の歌
  9. 夜のさすらい人の歌

副題にもあるように、この曲はフリードリヒ・ニーチェの同名の著書を読んだ作曲者のインスピレーションにより作曲されました。そして、曲の各部分に、ニーチェの著作から取ったタイトルが付けられています。しかしながら、作曲者は、この曲はニーチェの哲学を音楽で表現しようとしたのではないとしています。従って、筆者はこの曲を標題音楽とは考えず、絶対音楽だと考えています。

SF映画の傑作「2001年宇宙の旅」に使われたことで冒頭部のみが有名になりましたが、それ以外の部分については、意識してこの曲を聴こうとしない限り、聴く機会はすくないと思われます。冒頭部の印象から派手な曲と思われがちですが、30分以上ある全曲を通して聴けばわかるように様々な表情を見せてくれる音楽です。そしてうねるような情熱、緩急自在、縦横無尽のオーケストレーションによる多彩な表情、弦楽器ソロ達によるワルツ、金管楽器の咆吼等、そして巨大なオーケストラの持つダイナミックレンジの広さがこの曲を魅力的にしていると思います。また、提示された数々の「動機」が様々に組み合わされてこの曲が組み立てられています。

冒頭の数小節はコントラバスのトレモロ、バスドラムのロール、コントラファゴット、ペダルオルガンの持続音がppで鳴っているだけです。そして、第5小節目にトランペットが鳴り響きます。この派手な冒頭部を過ぎると、曲は一変して夜のように静かになります。これは「現世に背を向ける人々について」です。この部分には"Credo in unum Deum"(唯一の神を信ず)という聖歌の引用があり、それが彼らの世界の背後にある「神」を意味しています。オルガンの伴奏によりプルト単位で細かく分割された弦楽合奏を主体として、曲は盛り上がりを見せ、「大いなるあこがれについて」では管楽器も加わり、テンポを上げて「喜びと情熱について」に入ります。そしてひとしきり、盛り上がりを見せた後、弦楽器ソロが活躍する「墓場の歌」。それから細かく分割された弦楽器の静かなフーガに始まる「学問について」では、後に出てくるワルツを連想させるフレーズ等も出てきて盛り上がりながら緊迫感を増してきて、それに続く「病より癒え行く者」では「学問について」のフーガがよりダイナミックになり、やがて音楽はクライマックスを迎えます。そしてゲネラルパウゼでしきり直しして、沈静化した音楽は、再びクライマックスに向けて動き出します。そして3拍子になって、音楽も落ち着いてきます。そしてソロバイオリンにオーケストラ伴奏のワルツ「舞踏の歌」に入り、ワルツも盛り上がっていき、曲は再びクライマックスを迎えます。そこに深夜12時を告げる鐘が鳴り響き「夜のさすらい人の歌」(「夢遊病者の歌」、「酔歌」とも呼ばれる)になり、次第に音楽は静かになっていきます。そしてフルート、バイオリンの高音とチェロ、コントラバスの低音のピチカートの対立で曲は静かに幕を閉じます。

この曲の(そしてニーチェの著作の)タイトルにある「ツァラトゥストラ」とは、ゾロアスターをドイツ語化したものです。(ちなみに、イタリア語にすると「ザラストロ」だそうです)

また、マーラーの交響曲第3番の第4楽章も同書の「夜のさすらい人の歌」から歌詞を採っています。


Amazonで購入する

cover cover
小澤/ボストン交響楽団 ベーム/ベルリンフィル
もどる
トップへ